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2008年1月 3日 (木)

足るを知る

 モンゴル博物館には遊牧民の家ゲルが展示してある。内部には生活に必要なモノが置かれ、暮らしを忠実に再現している。見学者の多くから、「これが遊牧民の家なの」「トイレと風呂はどこ」「テレビやパソコンは」等々、矢継ぎ早に質問が飛んでくる。そして、必ずや最後に「日本人に生れて本当に良かった」という返事が返ってくる。

 足の踏み場もないほどモノに溢れた日本の家に比べたら、遊牧民の生活は何と貧しいものに映っていることだろう。家は人が人として生きるために大切な空間である。経済大国と言われる日本だが、先進諸国の中で最も貧しい住宅事情にある。それなのに、高級家具やステレオ・液晶テレビ・食器棚を埋める百円食器・・・。モノが溢れているため一家団欒の場所さえない。こんなにモノがあるにもかかわらず、いつまでも際限なく買い続ける消費者。日本人は本当に欲しいものがあるわけでもないのに、本当は買い続けるモノがほしいだけなのかも知れない。

 一般的に遊牧民は「自由気ままに草原で暮らしている」というイメージがある。しかし現実は、年間を通じて自然災害にさらされながら、四季に応じた移動を繰り返している。そのためモンゴルの人たちは欲望の少ない民族だと言われる。それは遊牧のためにいつも移動しなければならず、多くを持たないことを生活信条としているからである。

 私たちは幸福というものを、ともすれば外的な条件に求めすぎてきたようだ。そろそろ「足るを知る」ことも必要であろう。中国の老子は「足るを知れば辱められず、止まるを知ればあやうからず、以て長久なるべし」と言っている。

 人は生き続ける限り、何かを捨て続けなければならないのだから・・・。(神戸新聞掲載)

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